
野生傷病鳥の救護活動をとおして
多様な自然の仕組みを学び
人と自然が共生できる社会を作ろう
ご挨拶
私たちは人の営みのために弱ったり傷ついたりした野鳥を助け、自然に帰ることができるまで保護することを目的に 2010年に設立された団体です。10 年以上にわたる活動の中で今まで 1,000 羽を超える鳥たちを保護し、大阪府と兵庫県に 1 カ所ずつある施設でリハビリをして野生に戻してきました。このような保護とリハビリにかかわる活動はすべて協会の会員によって無償で行われています。
野鳥は私たちが思っている以上に身近な存在です。窓ガラスや送電線にぶつかったり、車にはねられたり、水田・畑・林に撒かれた農薬や湖沼や海に流れた油や化学物質などで汚染されて、たくさんの鳥たちが傷つき弱り保護されています。また、法律で禁止されているにも関わらず野鳥を捕まえて自宅で飼う違法飼養も後を絶ちません。人に長期間飼われた鳥は飛べなくなり自然に戻すにはリハビリが必要です。また、十分に飛べない巣立ちビナを弱っていると勘違いして「親切心から保護」し、親鳥から引き離してしまうこともあります。
そんな鳥たちがおかれている現状と私たちの活動について詳しく知っていただき、バードレスキュー協会の活動にご理解とご支援を頂けることを心から願っています。
協会の主な活動
- 野生傷病鳥の救護と野生復帰
- 救護技術の向上と知識の蓄積
- 救護活動をとおしての環境教育
- 鳥類や自然環境の基礎情報の収集
なぜ野鳥を助けるの?
私たちの身近に生息している野鳥は、私たちの生活によってさまざまな事故や犠牲を強いられています。野生動物も私たちと同様に、痛みや苦痛を感じることなく生存する権利を持っています。人によって傷つけられた鳥は人の手によって再び大空を羽ばたけるまで保護しなければならないと私たちは考えています。
人は傷ついた野鳥を見て、「かわいそう、なんとかしてあげたい」と思う心があります。しかし多くの場合、どうしたら良いのかわかりません。そのような人たちの相談窓口になり、時には行政への橋渡しになり、時には実際に傷ついた鳥を引き取り、最終的に野生復帰できるまで保護してから放鳥することが、日本バードレスキュー協会の果たす役割と考えています。
バードレスキュー協会が保護しようとしている鳥たち

油汚染
船舶の座礁などにより海や川に流出した油によって羽が汚染され、カモやカモメなどの水鳥が飛翔できなくなることがあります。ひどい時には全身に付着した油によって撥水性や保温性が失われ死に至ることがあります。鳥は羽を清潔に保つために嘴で羽をぬぐう「羽繕い」と呼ばれる行動を頻繁に行います。その時に油が口内から入って内臓障害を発症します。
この鳥は「オオハム」という名前の水鳥です。
羽に油が付着しているのが判ります。飛ぶことはできなかったのですが、元気に泳ぎ頻繁に潜っては餌を採っている様子でしたので、保護は断念しました。
衝突事故(交通事故)
道路上で動けなくなっているところを保護されました。左上腕骨の骨折で、一次保護された動物病院で「8字包帯法」によって骨折部を固定され、骨折部が癒着するまでの間協会で保護することになりました。
鳥はアカショウビンです。夏鳥で大阪府での繁殖記録はなく、渡りの時期に通過する旅鳥ですが、たまに衝突事故により保護されます。奄美大島での報告では保護される鳥の上位にランクされ、どうやら衝突事故を起こしやすい形態と生態のようです。
嘴に咥えているのは餌として与えていた「カエル」です。生きたものしか口にせず、また「コオロギは食べるがバッタは食べない」ような偏食家で悩まされました。
骨折部が回復することはなく、行政の許可を得て公共の展示施設に移送しそこで終生飼養してもらうことになりました。


錯誤救護(ヒナの誘拐)
野鳥のヒナの多くはうまく飛べない状態で巣立ちます。パタパタとジャンプするように枝から枝へ移動し、親から餌をもらいながら次第に飛べるようになります。カモやキジの仲間などは全く飛べない状態で巣立ちます。親鳥の後を必死で走って追いかけ餌をもらいながら成長しますが、人が不用意に近づくと親鳥は警戒して姿を隠すことがあります。このような時「ヒナが迷子になっている」と勘違いして保護されて連れてこられることがあります。保護されて短時間であれば元の場所に戻せます。時間がたてば親はあきらめてどこかに行ってしまいます。
ヒナの状態から人に育てられた鳥が自然界で自立して生きていくのは難しいため協会では基本、ヒナの救護は受け入れていません。
鳥はカルガモのヒナです。
衝突事故(窓ガラス)
庭でうずくまって動けない鳥がいると連絡があり収容しました。保護された方のお話だと「窓の下にいたので窓ガラスにぶつかったと思う」とのことでした。
外傷や骨折はなかったのですが、起立不能でした。左上腕部に衝突した痕跡があり、左趾の握力も弱く、保護された方の言葉通り衝突事故による麻痺が出ているものと思われました。
3日の強制給餌後自分で採餌するようになり、その後飛翔能力も拡幅したため、放鳥しました。
鳥はホトトギスです。ホトトギスの羽色は灰色と褐色の組み合わせが多いのですが、メスにはこの個体のように赤味がかったものもいます。
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密猟・違法飼養
野鳥をつかまえたり、捕獲した野鳥を飼うことは法によって禁じられています。にもかかわらず依然として野鳥を捕獲したり違法に飼養している人が警察に摘発される例が後を絶ちません。
狭い鳥かごで長期間飼養された鳥は飛翔筋が衰えたり、写真の鳥のように羽がかごに摺れて傷んだりします。このような鳥はリハビリによって飛翔筋が回復するか、羽が生え変わって揃うまで飛べなくなります。鳥の羽が生え変わるタイミングは種によって異なりますが、年1回また2回なので長期間のリハビリを余儀なくされることがあります。
写真の鳥は夏鳥のオオルリです。
防鳥ネットへの羅網
果樹園や養魚池に哺乳類や鳥の食害を防ぐためにネットが張られて、これに鳥が絡んで動けなくなる被害があります。
写真の鳥はフクロウです。
ネットに絡まっているところを保護されましたが、保護されるまでもがき続けたため羽が根本付近から折れて飛べなくなっていました。フクロウの換羽は年1回で、6月から9月にかけて行われます。この鳥は秋に保護されたため放鳥は折れた羽が生え変わる翌年の6月以降まで待つことになりました。


粘着シート
最近、ネズミ捕り用粘着シートに絡まり保護さる野鳥が増えてきました。屋外に設置された粘着シートには種子や昆虫が付着していて、餌を採ろうとした鳥が絡まっているようです。
まずこのようなシートは屋内に設置していただくべきと考えます。屋外に設置する場合には鳥が絡まらない工夫、鳥が入ることのできないメッシュサイズのカゴで覆う、などの工夫をお願いします。
粘着物質を有機溶剤で除去する方法もありますが、小鳥では刺激が強く衰弱しがちです。ベビーパウダーや細かい粒の小麦粉などを羽の1枚1枚に塗布して粘着成分が取れるのを待ち放鳥しました。